その22◆謎めいたその女(ヒト)は・・・ の話。の2。



2つのドアから同時に出てきたのはふたりの老婦人・・・

・・・・・・ふたりの!!



「こっちだよ、ほら早く運んでおくれ」       「あら!お嬢ちゃんじゃないのこんにちは」


おばあさん・・・・・・・・・・・と・・・・・・・・おばあさん!(マダムはこちらだ!)

(あああ!そうかあ!違うひとだったんだあ!
そっかあ!そうだよね!よかったあ!
なんだかわからないけどすっごく良かった!!)



女の子はきちんと(マダムのほうの)おばあさんにお辞儀をして

「こんにちは、えっと、野菜を運んできたんです。あの、おふたりは・・・・・・・」

そしたら(怖いほうの)おばあさんったらドアをコツコツ叩きながらさ
「ほらほら、おしゃべりは後だよ。こっちを先にすませておくれ。」
と、なんだかイライラ?

「・・・・あ、すみません・・・・ちょっと失礼します」

(微笑むマダムのほうの)おばあさんに未練を残しつつ

(怖いほうの)おばあさんの部屋のドアをあけ一歩入るとその中は・・・


あれえええ・・・・・・・?かわり種の花の部屋・・・・・!?


「お・・・・おばあさん・・・・!これ・・・・!

盗ってきたんですか・・・・?!」

ばか言うんじゃないよ。ほら、見てごらん」


窓から外を見るとそこには・・・




すばらしく広い中庭に
かわり種の花がそりゃあもう綺麗に咲いていたのよ。
そりゃあすごいもんだからさ、女の子はもうびっくり。

「わあ!ここって!これって!もしかしておばあさんが?」


「あたしはね、『お父ちゃん』が『かわり種』で商売していた時の上得意だよ。

やれやれ、何にも聞いてないようだね。


『お父ちゃん』はお前さんに何も教えなかったみたいだなとは

森でお前さんの乱暴な植え方を見てすぐにわかったけどね。



まあ、こういうのはね、教えればいいってもんじゃないからね・・・。

私も何も教えないよ。



私も今は自分でやってるわけじゃないからね。

こっちは年寄りだ、わかるだろう?

庭の管理はもう人に任せているからね。」



「野菜はここに入れておくれ。

ご苦労さん、これはお礼だよ。また今度頼むね。



その時

トントン


とやさしいノックの音。



「ふたりとも、お茶が入ったからこっちへ来ない?
ちょうどお隣のご夫婦も帰ってきたから紹介するわ。
とっても面白いひとたちなのよ。」



「あたしはまっぴらだよ。
お前さんはよばれてくるといいよ。
あの人のお菓子とお茶はそりゃあ美味しいからね。」



◆◆◆◆



マダムの部屋でのお茶の時間は

それはもう素晴らしかったんだ。

窓からは花が綺麗に見えて

美味しいケーキやサンドイッチが何種類も出てきて

紅茶も素晴らしい香りで。

とにかくすべてが綺麗で美味しくてやさしくて。


お隣さんのご夫婦は、これまたびっくりするようなひとたちだったし。
(このひとたちの話はまた今度話そうね)


いやあとびきりの楽しい時間だったねえ。



でもね、ほんとのこと言うとさ、
女の子の気持ちはずいぶんとね、隣の部屋にもってかれちゃってたんだよね。

(怖いほうの)おばあさん、今度またゆっくり会いにこよう。



お土産のお菓子もいただいてさ

みんなに(それぞれに)見送ってもらって

いいよねえ、うれしいよねえ、

女の子もね、ずっとずっと

手を振り続けたんだ。

お父ちゃんのかわり種の花、綺麗に咲いていたなあ。
今日の話はウカウカさんもびっくりするだろうなあ。

そう考えながらの帰り道
女の子はそりゃあもうしあわせだった。


良かったね。