その21◆謎めいたその女(ヒト)は・・・ の話。の1。



ある晴れた日。
洗濯物を干してごきげんな女の子の耳に聞こえてきたのは

ゴン!ゴン!ゴツン!ゴッツン!

・・・そりゃなんともいさましい物音だった・・・。


おそるおそる振り向くと、びっくりたまげたことに!

おばあさんが!

「喫茶ウカウカ」の常連さんの・・・ウカウカさんが「マダム」と慕うおばあさんが!


・・・・・女の子のかぼちゃをゴンゴンたたいてたのね・・・・。



「トマトはやめてえええええ!」

女の子はあせったあせった。

「お・・・・おばあさん・・・・!どうしたんですか!?何か気に障ることでも!?」


するとおばあさん(マダム・・・?)ギロっと女の子を睨んで


「お前さん、『お父ちゃん』の娘だろう?これはかわり種の野菜だね。

手入れは悪そうだが、やっぱり質はよさそうだ。

これとこれとそれ、適当に切っておくれ。

丸ごとはいらないよ。

こっちは年寄りだ、わかるだろう?

これに綺麗に乗るぐらいの量を頼むよ。」


女の子は怖いものには負ける(長いものには巻かれる)からさ

てきぱきと

野菜を切ったね、そして詰めたね。


するとおばあさん(マダムなのか・・・?)はくいっと指を動かして


「お前さん、運んでくれるだろうね?さあ、こっちだよ、ついておいで」


そう言うと、実にお達者な足裁きでずんずん進んでいったんだ。



パン屋さんの前を通り・・・そこそこ町の中ではそこそこ古い通りを進み・・・

ふいっと大きな門をあけておばあさんは入っていったのね。




古いお家・・・・じゃなくてアパート・・・?

あれえ・・・?ここって・・・初めて見た・・・・?

女の子が記憶をたどる暇もなく
ずんずん階段を上がっていくおばあさん・・・。


女の子は・・・ぜえぜえおいかけた。


(あれえ・・・・どの部屋だろう・・・・んもう・・・ドアを開けておいてくれたらいいのに・・・)




「あのお・・・・すみません・・・・・」

蚊の鳴くような声で女の子が言うと

ふたつのドアがおんなじ速度でひらいたんだ。


でてきたのは・・・・・・あ・・・・あれえ・・・・・・!?