その20◆いろんなことがまたはじまる の話。の9。



今日もやってきました そこそこ町へ。

女の子はもうさあ、小走りでやってきたんだよね。パン屋さんへ。


あ・・・いるいる今日は奥さんもいるね。
でも今日はどんとこい!

「こんにちは。野菜とジャム、もってきました。
・・・こんなふうにしてみたんですけど・・・どうでしょうか!?」


女の子がとりだしたジャムの瓶は、
昨日までとは違ってね
大ばあちゃんのはぎれやお母ちゃんが紡いだ麻ひもや
お父ちゃんのインクで女の子が書いたラベルで
かわいらしく飾ってあったんだ。

(そしてね。女の子はごそごそと用意してきたものをさらにとりだしたよ。)

「もし良かったら、お店のどこかに
これを置いてみて試してくれませんか?
味見用のジャムとクラッカーは、わたしが用意しますので」




パン屋の奥さんは・・・

「ふーん」

と、にやり顔。

「おだんごちゃん。いいところまで来たわね。
私の的確なアドバイス通りにすすめてきたじゃないの。」



(え・・・・?アドバイス?奥さん何か言ってたっけ?)

「いいわよ。
試食セット、置きましょう。
ジャムもさっそく置くわよ。
明日の朝、1ダースもってらっしゃいよ。」

!!!!!!

「あた・・あたし!すぐ持ってきます!すぐです!近いですから!
待っててください!すぐです!!」


◆◆

女の子はダッシュで行って戻って来たね。
(ウカウカさんの猛ダッシュ並みのスピードだったね。)


「おー速かったねおだんごちゃん。
フッフッフ。おじさんも素早くこんなもの作ってみたよ。
『かわり種の森の野菜サンド』
どうかな?」

「わあ!!」



「野菜の香りがとっても良かったからね。

サラダ仕立てで食べるのが美味しいかなって思ってね。
さっぱりしたソースを少しだけかけて、
野菜の味を生かしてみたよ。

これはね、かなり美味しいよ。きっとお客さんに喜ばれるよ。」


その時、女の子・・・ぐわっとムネが熱くなったんだ。
なんだろう・・・この気持ちはなんだろうねえ

女の子が何か感じたその時に・・・・
奥さんが電卓片手にずいっと出てきて話し始めたよ。

◆◆

「おだんごちゃん、ジャムの代金だけどね、
お店での販売価格は500園ね。
取り分は、おだんごちゃんが300園、うちが200園。
(あ、今、ぼったくり?って思ったでしょう!
あーたね、世の中っていうのはね、そうやって回っているのよ、
いやなら他へ持っていってごらん。)

うちは良心的ですからね。
売れた分だけ支払うっていうんじゃなくてね、
きっちり買い取りますからね。
はい、じゃあ今日は
とりあえず1ダースの仕入れで
300園×12個=3600園ね。
ご苦労様。
次の仕入れはまた連絡するわ!」

・・・・女の子・・・・
いろんな意味で頭がぼーっとしてきたよ。



そしたら次にまたおじさんがね

「うちの営業日は月〜土だからね。
野菜はできたら毎日欲しいな。
その日のオススメを2〜3種類持ってきてくれるかな?

野菜の値段はね、そうだね、
そのものを見てその時その時相談して決めることにしようかね。

今日のにんじんとパセリは両方で、700園ってところかな。
(今日はオマケで千園ね)」


◆◆

女の子は何度も何度も
「ありがとうございます」って大きな声で言ってね、おだんごをぴょこぴょこさせてね、
それからさ、
いただいたお金の中から400園支払って
『かわり種の森の野菜サンド』をふたつ買ったんだ。

ウカウカさんに
食べてほしいなって思ったんだよね。


◆◆


もうウカウカさんは帰ってるかな
走って帰るかえりみち。

ああ、今日はねえ、今日はさあ、
うーんとね、なんていうんだろう、
女の子の中でふんわりと・・・そうだね花が咲きはじめたような

そんな日になったよね。



◆◆◆

あ・・・・・そうだ。もうひとつ。
おじさんがこっそり女の子に告げたことがあったんだった・・・。


「・・・・おだんごちゃん・・・このクラッカーはいけないよ。
古くて食べられたもんじゃあない。
うちのパンのはじっこをね、切って置いておくからさ、
もうこのクラッカーは持ってこないでね。
絶対だよ。」


・・・・・うん。そうだよね。良かったね。