その11◆満月の夜 の話。




かわり種の森の奥にはね


満月の夜になると見えるちいさな湖があるんだよ。



女の子が来るより前からさ
このこと知っててやってくる、ちいさなドラゴンがいたんだよね。

そのドラゴンはね、小さい生き物たちよりはずいぶんと大きかったんだけども、
ドラゴンたちの中ではずいぶんと小さいもんだった。

そしてね、綺麗なものが大好きだったんだけども
ドラゴンたちが住んでるのはさ、ほら、あれよ、
ちょっとゴツゴツしてたり煮えたぎってたりするじゃない?
お花とか咲かないし、持ってきたレースもさ、焼けちゃったりしてたんだよね。

綺麗なものに囲まれて、かわいらしく過ごしたいなあって
ほんとは誰かと一緒に楽しみたいなあって思ってたからさ
人間とかが住んでるところへ行ってみたこともあったんだ。

でもさ、やっぱりドラゴンってのはね、
怖がられちゃったり、売り飛ばされそうになっちゃったりとね、
うまくいかなかったんだよね。




だからかなあ。
ちいさなドラゴンは、よく、涙をこぼしていたんだよ。

寂しいときは紫色の涙
悲しい時は青色の涙が

ぽろりぽろりとこぼれたんだ。

その涙がね、そりゃ綺麗な涙だったのよ。

ドラゴンは綺麗なものが大好きだったから
自分の涙を、瓶にいれておいたんだって。

でもね、すぐにいっぱいになっちゃって。
それでね、この湖を見つけた時から
ここに流すことにしたんだね。




今夜も満月。涙がいっぱい入った瓶をもって


ドラゴンはやってきた。

そうしてね、涙を湖に流していたら
ああ・・・・瓶を落としちゃったんだ
(ドラゴンの手ってさ、ほら、あんまり器用じゃなさそうだよね?)

ふたつの大切な瓶は
粉々に壊れてしまった。
どうしよう・・・・・ドラゴンはとても悲しくて、
でも、瓶が無いから泣けないような気持ちになって
でも苦しくって・・・ってそんな時

後ろから声がしたんだ。


「だいじょうぶよ」




振り向くと、そこにはちいさなトラがいたんだって。


(いや・・・・・どう見てもブタでしょう・・・・)

そのブタ・・・いえ、ちいさなトラが言ったんだ

「ほんとはそんなものいらないでしょう」





「でもわたし、ひとりぼっちなの」



ドラゴンは言ったんだって。

そしたらブタが、いやまた失礼、ちいさなトラが

「ここにいればいいじゃない。

みんな、けっこうそんなふうだけど、
みんな、なんとかなってるわよ」

このブタの (ごめんしつこい) ちいさなトラの一声で

ドラゴンはかわり種の森の住人になったんだって。



ちいさなトラはというとね・・・・・


闇に消えていったんだって。

ドラゴンは・・・・やっぱりちょっとひとりぼっちじゃないのかなあって
ちょっと寂しいなあって思ったらしいんだけどね、
まあ、いいやって思って、その夜はぐっすり眠ったんだって。



満月の夜のひかりの中で。