◆9月のお話◆

かわり種の森には、満月の夜にだけ見える、ちいさな湖があるんです。
ちいさなドラゴンのフランチェスカは、女の子が住み始めるずっと前からそれを知っていて、満月の夜には必ず訪れていたんですね。

おや、今夜はちいさなトラ(ブタとは言いません)のねえさんも一緒のようです。

近頃はね、金曜日の夜が満月だと、ねえさんやってくるらしいんですよ。
なんで金曜日の夜だけなんでしょうね?
(・・・・ねえさんの謎についてのお話は、はまだとうぶん先になります。あしからず。)

フランチェスカは、ねえさんが大好きなのでうれしくて。
喫茶ウカウカで過ごす時間とはまた違う・・・金曜日の満月の夜が楽しみで楽しみで。カレンダーにしるしをつけて待ってるんですって。

でも、ねえさんが自分のことをどう思っているのか、怖がりの彼女はわからないのね。
だから、ねえさんには自分のうれしい気持ちは伝えられないでいたのよ。
嫌われたくないのね。(そんなことありゃしないんだけどさ。)
でもさ、心配になっちゃう時ってあるんだよね、好きだからなおさらにね。


そんなふたりが今夜何を話しているのか・・・ちょっと盗み聞きしてみましょうね。

◆◆◆

フランチェスカ「お月様って、本当にきれい。いつまでも見とれてしまうわ。
・・・・でも・・・・・あんなに美しいのに、いつもひとりぼっちよね・・・
あたしとっても心配になるの。お月様、さびしくないかしら・・・・。

前に、たまらない気持ちになって、お月様を目指して飛んでみたの。
すっごくがんばって飛んだんだけど、たどりつけなかったわ。
あたしの羽、ちいさいから・・・。だめよね、私、なんにもできないの。」

ねえさん「ひとはみんなさびしいのよ。
だからあんたが心配することじゃないわ。」


ねえさんのこんな言葉に、フランチェスカは、すぐに返事はできません。
じーーーーっと考えて、それからそっと(言える雰囲気だったら)ちいさな声で答えます。

(そんな時ねえさんは気にしている様子はなく、時に鼻歌を歌ってたり、
ドラゴンがそこにいないかのようにくつろいで、なんとなく、待ってくれてます。)

・・・・・・・・・・・・・

フ「・・・・そうなのかな。そうかもしれないな。」


ね「あんたはお月様を見上げた時にしかお月様のこと考えないかもしれないけどさ、
お月様のほうはさ、あんたのこと、いつでも目に入ってくるでしょう。
あんたがメソメソしてるとこだって知ってるわけよ。
お月様のほうがずっとあんたのこと心配してるんじゃない?」


・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・

フランチェスカはじーーーーっとお月様をみつめていました。
もうほんとにずーーーーっと。

そしてそっと言ったんです

フ「あたしね、お月様の心配をしている時、お月様とつながっているような気がしていたわ。なんとなくだけど・・・。
・・・・・心配するって・・・ひとりじゃないって感じられることなのかしら。

そうしたら、お月様もひとりじゃないって思ってくれて、さびしくなかったかしら・・・・。

・・・そしたらあたし、お月様の出ている夜に、ときどきは泣いてしまってもいいのかな・・?
私、泣いちゃいけないって思っていたの。
でも、いいのかな?・・・・・・良かった!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

珍しく、ねえさんの方が返事できなくなっちゃったのね。
ほんとはね、「え!なんでそうくる!?話がそれてない?」とか
つっこみたい気持ちは山盛りだったんだけど・・・・。
ねえさん、そういうことは言わないのよ。


だってね、みんな、わかんないしね、わかるんだよね。
いいんだよ、安心してね、大丈夫だよ。


(ちいさなドラゴンはね、泣いていいって思ったら、前より泣かなくなったみたいだよ。)



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