その14◆いろんなことがまたはじまる の話。の3。


お母ちゃんはTVでお菓子の作り方を見たりした時

いつも言ってた。

「こんなに美味しいものばっかり入れて作るんだから、不味くなるわけないじゃないねえ」
と。
・・・・・・・女の子は言いたかったね
「おかあちゃん、不味くなること、あるよ・・・けっこうあるよ!」
と。

それにさ、いつも鼻歌まじりで、けっこう適当に作ってる(ように見えた)のに
お母ちゃんが作るものはみんな
びっくりするぐらい美味しかったんだよねえ。

女の子(・・・・あたしが作るとどうしてだめなのかなあ?変だよねえ・・・)


女の子に残っているものは
特売で買った大量の砂糖だけだった。

・・・・・・・・・・・・これさ、封があいてないよね。

ま、つまり、昨日のお菓子には、砂糖がまったく入っていなかったってわけだ。
(でもまあ、あの不味さはそれだけの問題じゃないなと思うけどね。)

・・・・・女の子はさ、ほんとのこと言うとさ、
ちょっとしょんぼりしてたんだよね、まだね。

だがしかしだ!

女の子は持っていた。
何をってさ、「おんなの意地」をよ!

ほら、野菜は、あるんだもんね。外にもたっぷり、売るほどあるもんね。
(売れないけど)

さて!どうしようか

あ、そうだ、時間(だけ)はたっぷりあるんだから
今日は焼くんじゃなくて煮込んでみたらどうかしら!

ジャム、いいじゃない、お洒落じゃないの。
やっぱり女の子が作るものはお洒落じゃないとね。


んんんんんん!
美味しい!!!

美味しいものがとうとう出来上がったよ女の子!
こりゃー売りものになるよ!!間違いないね!

喫茶ウカウカの方角にきりっとしたまなざしを向けてさ
女の子はそこそこ町へ向かったんだね。



美味しそうで気になっていたパン屋さん
でもまだ入ったことなかったんだ。
お店の人はどんなだろう

女の子はさ、ほらやっぱりさ
女の子だもん。気が小さいとこだってあるんだよね

でもねここは勇気を出して
こんにちは!と入っていった。


そう言うとさ、ウカウカさん
なんも食べないまんまでね、ねどこに入っちゃったのね。


「ワシ、今日いろいろあってぐったりなんだっぺ。

おまえ様が一生懸命作ったケーキは
明日も明後日もワシ食べるっぺ。

今日は寝るっぺよ。

「丁度いまクロワッサンが焼きあがったよ〜〜〜」

ドアを開けると美味しそうな焼きたてパンのいいにおい

・・・そしてこれまた気のよさそうな笑顔

(よし!これならいけるぞ!)
女の子はにっこり



「こんにちは。私が作った野菜のジャム。味見していただけますか?」

「ほう。どれどれ。
うん、美味しいねえ。
これはなかなか美味しいよ。」

(ほんとに美味しかったんだ!)

「もし良かったらここで使ってもらえませんか?」

「え?ううーん・・・・・そうだねえ・・・・。
うちはジャムパンは作ってないんだよね。
お店で販売するにはさあ・・・・・
うーん・・・・そうだねえ・・・。
美味しいことは美味しいんだよ、けどねえ。
これといってこれがどうかっていうとそれだよねえ・・・
うーんちょっとこれだとあれがどうだろうかねえ・・・・・」
・・・・・・・・・・


・・・・なんかよくわかんなかったんだけど、
これだとどうもあれらしかった。

女の子はさ、しょんぼりしてしまったね。また。


でもね気のいいパン屋さんはさ、
奥さんが好きそうだからって(試食した)2つの味のジャム、買ってくれたんだよね。
ひとびん500園、ふたつで千園。

それからさ、焼きたてクロワッサンふたつ
くれたんだ。


・・・・・すいぶんいい取り引きだったよねえ!
しょんぼりすることないんじゃないの?

でもね、ま、さ、
女の子の中のここらへんの部分がさ、
やっぱりちょっとしょぼんってなっちゃったんだ。

そういうことって、しょうがないよね。